会長・理事長あいさつ
「島根県柔道連盟ホームページ開設に寄せて」
会長 小村和紀
これからの様々な活動をするに当たって必要なる柱があります。それが「人づくりとしての柔道」です。これこそが、すべてのことにかかわる要となるもので、これをしっかりと確立していかなければならないと考えています。
嘉納治五郎師範は柔道修行の目的を「己を完成し、世を補益する」ことにあると説かれています。つまり柔道の修行を通じて世の中のためになるような人になりなさいということです。なぜ柔道が人づくりに役立つのか。それは、オリンピックを目指す人、道場で技の完成を目指す人、と到達目標は異なっても、各々が白分の完成度を高めるために、目ごろ努力、精進されています。人づくりとはまさにその過程においてなされるものだからです。
その人づくりのために必要なのが指導者です。皆さんと情報や知識を共有し、指導者の資質を高める場としていきたいと考えています。人づくりと同様に重要なのがやはり「強さ」です。
日本の柔道はやはり強くなければいけません。とはいえ、ただ強くなればいいというものではありません。本物を世界に発信したいし、本物で世界の頂点を極めてほしいと思っているからです。ここでいう本物とは「礼法を守り、正しく組んで、理にかなった技で一本をとる」柔道ができることを指していまず。世界で勝つことが「本物は強い」という実証となります。
最近、この本物が日本でも崩れつつあります。ある小学生の全国大会で「持たすな、切れ」「足を取れ」と叫んでる指導者がいます。勝つことはもちろん大切なことですが、小学生は将来的に柔道を完成させることが目的であり、しっかりとした基礎づくりをしてあげることが大切な時期です。
そして、そこを正しく指導者の役割ですから、将来をねらう子供たちを教える指導者の養成には特に重点を置きたいと思います。
また、平成二十四年度からは中学生で武道が必修化されます。せっかく必修科目になるのですから、「柔道とはこういうものらしい」と形だけ覚えるのではなく、投げるスピード、倒した時の迫力ある音など、本物が持つ素晴らしさに触れてほしいと思います。日本人として日本で生まれた武道や伝統文化などに触れ、白国の文化を理解することが、真の国際人につながるはずです。
最後に、競技としての柔道を追求する全柔道と柔道を通した教育を実践している講道館、この二つの長を兼ねるということですが、どちらも「人を育てる」という点では共通するところがあります。両方の今までやってきたことをきちんと整理していけば、さらに大きな相乗効果を発揮できると考えております。
皆さんと力を合わせてやっていくことばかりです。
是非、柔道人の皆様には、柔道界発展のため、御支援、御協力くださるようお願いします。
想うところ
理事長 花本茂人
今年は嘉納師範が初代会長としてオリンピックに参加して100年目。そして講道館にあっては創立130周年という記念すべき年である。今夏ロンドンで開催されるオリンピックでは、記念の節目にふさわしい好成績を期待しているところである。また、現在世界柔道連盟に加盟している国が200カ国を超えるほどに普及した柔道は、まさに世界のJUDOに発展し進化し続けている。これは柔道という特性ある技術をスポーツ化した取り組み、たとえばカラー柔道衣やカラー畳の導入は普及・発展に大きく寄与していると思う。そして今は、柔道衣規格の統一化によってより正しく組みあい、柔道本来の技の攻防が多く見られることによって、更に柔道への興味関心が高まるであろう。
しかし、忘れてはいけないことがある。柔道の原点は嘉納師範が提唱されている「精力善用」「自他共栄」の精神であり、『人間教育』が原点であることを。
学校体育、社会体育に関わらず柔道に携わり指導していく過程の中で、指導における優先順位を誤らないように気をつけたいものである。とりわけ、全日本柔道連盟が取り組んでいる「柔道指導者講習会」「基本・安全指導」「公認指導者資格」「中学校必修化に伴う外部指導者」(本県では【仮称】アシスタント・バンク)等において、本県も多くの受講者があり意識の高さに感謝している。
このように研修や研鑽を積み資格や資質を兼ねそなえた指導者になることが、柔道の教育性と競技性がバランスよく共存し、危惧されている怪我についての防止にもつながるものであろう。
今後いっそう、柔道は安全であり人作りに有益であることを検証しながら、日本の文化である柔道を更に発展させていきたいと想っている島根である