全柔連からの連絡を受けて県柔道連盟会長山藤哲夫先生より
まず全柔連の専務理事 近石康宏先生よりとどいた文書です。
日頃より全柔連の事業にご協力頂き、深謝申し上げます。さて 4月30日長野県にて、柔道事故に関する以下事案の判決が言い渡されました。
事案内容:2008年5月長野県の柔道教室で起きた柔道事故。当時小学6年生のSさん(16)が柔道教室の元指導員(40)に投げられ、急性硬膜下血腫になり、重度障害を負わせた事案。指導者のかけた片襟体落としにより、頭は打たなかったが、急性硬膜下血腫になった(回転加速度損傷との診断)。2度にわたり不起訴になったが、検察審査会により強制起訴となった事案。
判決内容:業務上過失傷害罪により禁固1年執行猶予3年
全柔連では本判決を非常に深刻に受け止めております。
今後かかることが無いよう、事故防止に全力を尽くさなければならないと思います。本件事故に関係する注意事項を添付の通り纏めましたので、熟読の上、是非貴団体の指導者の皆様にお渡し頂き、一層の事故防止に努めてもらうよう、ご指導の程お願い申し上げます。
この判決に当たって焦点になったのは「回転加速度損傷」を認識していたか否かです。つまり、頭を打たなくとも激しく頭を揺さぶれば、「回転加速度損傷」により硬膜下血腫になりうることを認識していたかということです。柔道の頭部外傷の多くが「急性硬膜下血腫」によるものであることは皆様ご承知かと思いますが、とかく頭を打ったかどうかが問題とされております。しかし、頭を打たずとも「回転加速度損傷」でも硬膜下血腫になりうることをご認識頂きたいと思います。また、脳振盪を起こした後、稽古を行い、硬膜下血腫になった事例もあります。(セカンドインパクトシンドローム) 脳振盪には十分なご注意をお願い致します。
以上
県柔連新会長 山藤哲夫先生より皆様へ提言です。
回転加速度損傷及び脳振盪について
今まで様々な形で県柔道連盟の行事、安全指導の説明会、小冊子「柔道の安全指導」にてご説明しておりますが、以下を再度ご考慮頂き、事故の防止に努めて頂くようお願い申し上げます。
1. 回転加速度損傷
柔道の頭部外傷の多くが「急性硬膜下血腫」の発症を原因としております。その殆どが頭を激しくぶつけたことによりますが、頭を打たなくとも、脳が激しくゆすぶられる力(回転加速度損傷)により「急性硬膜下血腫」を発症する可能性があります。
2. 脳振盪について
脳振盪は脳損傷の典型的な徴候であり、脳振盪を軽視してはなりません。
以下脳神経外科学会の提言をご参照願います。
スポーツによる脳損傷を予防するための提言
日本脳神経外科学会 平成25年12月16日
日本脳神経外科学会並びに日本脳神経外傷学会は、「スポーツによる脳損傷」を予防するための研究を行い、それに基づいて可能な限り最善の診療を行うよう努力してきた。しかし、医師は、患者並びに関係者の行動を規制することができない。従って、的確な診療を行うには、国民の理解が不可欠である。この提言は、スポーツによる脳損傷」について、国民が認識しておくべき必須の事項を整理したものである。
1-a スポーツによる脳振盪は、意識障害や健忘がなく、頭痛や気分不良などだけのこともある。
1-b スポーツによる脳振盪の症状は、短時間で消失することが多いが、数週間以上継続することもある。
2-a スポーツによる脳振盪は、そのまま競技・練習を続けると、これを何度も繰り返し、急激な脳腫脹や急性硬膜下血腫など、致命的な脳損傷を起こすことがある。
2-b そのため、スポーツによる脳振盪を起こしたら、原則として、ただちに競技・練習への参加を停止する。競技・練習への復帰は、脳振盪の症状が完全に消失してから徐々に行う。
3 脳損傷や硬膜下血腫を生じたときには、原則として、競技・練習に復帰するべきではない。
以上
これらを踏まえて、このような不幸な事故がくれぐれも起きないように指導者の十分な知識と安全配慮の取り組みを考えて、柔道を志すもの皆が幸せに楽しめる、安全な柔道を心がけるよう、我々の意識を高めていきたいものだと思います。
皆様ぜひご協力ください。